マレーシア記 4日目

 7時頃起床。コタバルへの飛行機は10時5分発。国内線なので搭乗手続きにそこまで時間がかからないだろうと考え、9時過ぎに空港へ着いておく予定にする。KLセントラル近くのリトルインディアを見ておきたかったのでKLセントラルまではすぐに来ておいた。着いたのは7時半。駅でKLIAエクスプレスの時刻表を確認し、8時45分発、9時18分着のに乗ることにする。駅からしばらく歩きリトルインディア周辺まで行くが、まだ朝が早いからなのかシャッターの下りている店が多い。しばらく探すと開いている飲食店をいくつか見つけた。そのうちの1つに入ろうとするが外から眺めてもどのような感じで注文するのかがわからない。メニューを見て注文する感じでなくプレートに盛り付けてそれをカウンターに持っていき払うというような雰囲気ではあるが確信はもてない。慌ただしく客が出入りしているので店員に尋ねるのも迷惑な気がして、他の店をあたるが、そちらも同様に注文の形式がつかめない。このように逡巡しているうち時間の余裕がそれほどなくなってきたので諦めて帰ろうかと思いつつ歩いていると普通にメニューを見て注文する形式の店を見つけ、そこに入った。イドゥリとお茶を頼んだ。イドゥリを食べたのは初めてだが美味かった。サンバルとココナッツチャツネがついてきて、それを指でぐちゃぐちゃと混ぜて食べた。
 食べ終えて駅へと向かうが徐々に間に合うか瀬戸際の時間であることが判ってくる。足早に、時には小走りも交えつつ駅へと向かう。駅にはなんとか間に合いそうな時間に着いたが、構内で道を間違え予定していた電車を逃してしまった。次のに乗ると着くのは9時33分。搭乗ゲートは出発の20分前つまり9時45分には閉まる。これは思ったよりもやばい気がしてきた。とにかく駅に到着してから最短で搭乗口まで行けるよう電車の待ち時間と乗車時間を使って調べる。ターミナル内の移動手順や搭乗ゲートの場所は頭に入れた。昨日のうちにWebチェックインは済ませてあるので、不確定要素なのは荷物検査だが、これはもう運次第だ。電車が着く数分前からドアの前に立ち、リュックの紐をきつめに締め体に密着させ走りやすくした。そして恥じらいを捨ててとにかく出来る限り走るのだとマインドセットをした。出発20分前に着けるかは結構怪しいが搭乗がもたつくかもしれないし、数分の遅れなら大目に見てもらえる可能性もある。電車はほぼ時間通りに着いた。ドアが開くと同時に走りだす。予習の成果もあり迷わずにターミナル内を移動できた。また荷物検査も待ち時間1分ほどで済んだ。この時点で間に合うような気がしてきたが1つのイレギュラーで容易に無くなりうる余裕しかないので気は抜けない。次は搭乗口まで走る。搭乗口は端から2番目なのでかなり遠い。リュックをきつめに締めているので多少呼吸がしづらく息が切れて途中歩いたが9時41分に着いた。半ば無理かもしれないと思っていたので強い安堵を感じた。無事乗れた。

 飛行機がコタバルへ近づき地上が見え始めるとクアラルンプール周辺との違いに驚いた。地面の大部分は濃い緑で覆われており泥の色をした太く長い川が見える。ただし川と判別できるのは周囲の環境からして川以外ではありえないからであって、流れを感じさせず透明感がないため、それのみではのっぺりとした茶色の帯状のものにしか見えない。また地面を蔽う緑は椰子の木めいた木の葉によるもので南国のような雰囲気がある。
 到着して飛行機を降りたあたりで再び飛行機に乗るまでのドタバタを思い出し、またそれによる疲労もあり一休みしたい気分になった。空港内のカフェでケバブラップのようなものとコーヒーを摂った。
 コタバルに来たものの特に目当ての物があるわけではないので、地図を見て町の中心部らしき場所へと向かう。Grabを使った。適当に場所を指定したので下りた地点の周りは特に何もなかった。そこから適当に歩くと広い道路があったがほとんど車もバイクも走っていない。その開けた道路の脇には風で寄せられた紙、ビニールなどのゴミが散らばっている。この日は中々暑く、この空漠とした道路を歩いているとコタバルは暑くて何もないハードボイルドな土地なのだという感じがして来た。実際には全くそんなことはなかったが。自覚のなかったことだが、どうやら僕は初めて行く土地の印象をドラマティックに捉えたがる傾向があるらしい。
 ともかくその近辺はあまり何もないので改めて地図を見てセントラルマーケットという場所へ向かった。このマーケットはクアラルンプールやチョウキットよりも落ち着いたマーケットで生活感があった。果物、鶏、米、野菜、手作りのお菓子、おもちゃなど色々売っている。何となくアウェイ感があり、店員と目が合わないようにチラチラ見ながら何も買わずに一回りした。何か冷たい飲み物を売る店があれば買おうかと思ったがないので自販機で豆乳を買った。この自販機は日本の物を流用しているようでお札の投入口には1000と書かれているし注意書きも日本語で書かれている。そして何故か側面には漫画フェアリーテイルのプリントがされていた。逆側にはアメコミのプリント。豆乳を飲むと少し落ち着き景色がはっきり見えてくるような気がした。クアラルンプールのチャイナタウンのときもそうだったが何か一つ買うと気持ちが落ち着いてくる。もう一度マーケットをじっくりと回ることにした。ある果物屋を見ていると店主のおばさんがロンガンを1つ試食させてくれた。続けてロンコン、マンゴーも試食させてくれた。ロンガンと見たことのない果物があったのでそれを買った。ドリアンなんとかという名前らしい。後半は聞き取れなかった。ドリアンのような味がするのかと尋ねると、違うとのこと。おまけでロンコンを1房くれた。それを持って歩いていると別の果物屋が声をかけてきてランブータンを指さし続いて指を3本立てる。3RM ということらしい。無愛想で何故当然こちらが買うような態度なのかは不思議だったが先の店ではランブータンが無かったので買うことにする。果物が透けて見える袋を持ち歩いていると次々呼び止められる可能性があると考え、手頃な手提げ袋を売っていないかかとマーケットを軽く見て回るが無い。マーケットは3階まであるようだったが上の階にのぼっていくのが女性ばかりだったため、男子禁制であったり、奇異な目で見られる可能性があったりするかもしれないと考え行かなかった。
 別の場所に行こうと歩いているとコタバルに来てから見ていなかったセブンイレブンを見つける。水を買って外に出ると外から見える位置にセブンのロゴのついた不織布の手提げ袋を売っているのを見つけた。多少小さいが用は為しそうなのでそれを買った。1.9RM。それに果物を移し替える。すぐ隣にコインランドリーを見つけたので溜まっている洗濯物を洗うことにする。そのコインランドリーは先にコインチェンジャーでお金をランドリー用のコインに交換し、それをランドリーの機械へと入れる仕組みになっている。ランドリー用のコインを機械に入れていくのだが、そのうちの1枚のコインが投入しても何故かそのまま返却されてしまう。何度か試したが駄目で、何か勘違いをしているのかと思い、説明書きを探してキョロキョロしているとランドリー内の他の客が近づいてきてコインを貸してごらんというような雰囲気を出すので渡す。するとそのコインの端を投入口に少しだけ挿し込み、そこから勢いよくコインを押し込んだ。すると無事コインは機械に収まった。勢いが大事だったらしい。
 洗濯を終え宿泊先へと向かう。今日の宿泊先は多少街から離れた場所にあるのでGrabで宿の住所まで送ってもらった。車を降り、建物を確認するとWebページ上の写真と見た目が違う。近くにそれらしき建物が無いか探すも見つからない。おかしいと思い住所ではなく宿の名称を地図アプリで検索すると数キロ離れた場所が表示される。今いる場所は村のような場所で多少入り組んだ道の先なのでGrabを改めて呼ぶのは時間がかかりそうだ。歩いて行くことにした。この日も快晴で歩いていると汗がダラダラ出てくる。やっと宿の近辺まで行ったところで前方2,30メートルほど離れた場所に茶色の牛が見えた。こっちに気づくと、こっちを見ながら歩みを進めてくる。突進でもされたらどうしようかと思うがこの道を行かなくては辿りつかないのでゆっくりと警戒しながら進む。意味があるかは分からないが積極的に目を逸らして敵意がないことを伝えつつ近づくと、ある程度近づいたところでヒモで繋がれていることが分かり安心した。宿へ着くとホストが来て「すごく汗をかいてるね」と言うので住所が間違っていたせいなんだけどなと多少イラっとしたが言わなかった。宿はかなり綺麗だった。すぐにシャワーを浴びて一時間ほど休憩した。それからナイトマーケットに出かけようと宿を出て歩き出すと後ろから一人の男性が来て名前を聞いてくる。突然何かと思ったがホストの息子らしい。Grabを使うなら近くに丁度目印になるモスクがあるからそこで呼ぶといいといって案内してくれた。加えてそのモスクの中を見ながら色々と説明してくれた。そこからGrabを呼び街へ。
 時間は7時頃で丁度夕飯時なのでチャイナタウンで肉骨茶を食べる。勝手にトンポーローみたいなのをイメージしていたが、案外あっさりとしており滋味溢れる味だった。美味い。その後ナイトマーケットへ行くがテントがあるだけで店は開いていない。そういえばホストが20時から始まるのだと言っていた。時間を潰すために近くのモールに入り地下のスーパーを見る。このモールには昼にも来たが手にフルーツの袋をぶら下げていたためスーパーには入らなかった。色々と気になるものはあるがリュックにそれほど空きは無く、昼に買ったフルーツもまだまだあるので控えめにバナナ、A&Wルートビア、oligoという名の飲み物を買った。バナナは短い品種が日本のものより甘いという話を聞いていたので買ってみた。バナナを買う際に売り場に吊るされているのを一房取りそれをそのままカゴに入れた。カゴをレジに出すと店員がフフッと笑って何か言った後バナナを持ってゆっくりと売り場の方へ歩き去った。いまいち何が起こっているのかは分からなかったが待っていると、3分は待ったと思うが店員が戻ってきた。その手には先のバナナの入った袋がありその袋には値札のシールが付いていた。どうやら売り場で値段をつけてもらう必要があったらしい。これほどにこやかにこちらのミスの面倒を見てくれるなんて親切すぎやしないだろうか。
 モールを出ると20時を過ぎており徐々にナイトマーケットの店が開き始めていた。見て回ると女性向けの衣類を売る店がほとんどで特に買いたいものはなかったが一通り眺め帰った。
 宿に戻り今日買ったフルーツや飲み物を食べることにする。まずは気になっていたルートビアドクターペッパー的なのをイメージしていたがもっと癖が強くサロンパスみたいな風味がある。不味くはないが少し甘さが強すぎる。もう少し控えめならゴクゴク飲めていいと思うのだが。ただ日常的に飲みたいかといえばそうではなく、やはり色物。次にバナナ。甘いには甘いが期待していたほど甘くはない。密度が高くネチッとした感じ。まだ完熟していない感じがする。ドリアンなんとか。よく見るとヘタのあたりがカビていて白い綿毛状の菌糸が張っている。また今日の移動中に一度袋を地面に落としてしまったのでそれによって果肉の一部が潰れ、グジュッとしている。ナイフがないので、電車のプリペイドカードをウェットティッシュで拭き、ナイフ替わりに当ててみると果肉は柔らかくスッと切れる。2つに切断し開くとトロピカル系のフルーツのいい香りがする。芯の周りが黒みがかっているので取り除くとその下に果肉と同色をした半透明の尺取虫めいた数ミリの虫が数匹ウネウネと動いていた。大分食欲を削がれたがとりあえず目に付いたものを取り除いた。明らかに多少傷んではいるが香りはいいので、安全そうな場所を少し試したい。果肉が綺麗な箇所を少しすくって食べてみると、りんごの味にトロピカル系のフルーツ風味を混ぜ、水っぽくしたような味がする。繊維が多い。このフルーツの正体が気になったので色々検索キーワードを変えて調べたところ、これはサワーソップだということが分かった。ドリアンベランダともいうらしい。次にロンガンを食べた。ライチに似ている。多少ネギっぽい風味。皮に柔軟性がないため、強く押すと皮がパキッと割れてそこから爪を入れるとツルッと剥ける。楽でいい。まあまあ美味い。次にロンコン。これは皮が柔らかく一か所に爪を立てて裂け目をいれればそこから綺麗に剥ける。味はグレープフルーツに近いが明確に違う。酸味はほぼない。美味しい。ただ種が果肉の中にありそれが脆いため大抵かみ砕いてしまい、そして噛むと多少渋い。ランブータン。これもライチに似た味。剥くのはかなり簡単で果肉の弾力が強い。中心に種があるのだが、種の一番外側の層が剥がれやすくそれが渋い。果肉の味自体はいいのだけれど種による欠点が目立つ。ロンガン、ロンコン、ランブータンの中では欠点の少なさからロンガンが優勝。

写真


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道路その1

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道路その2

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セントラルマーケット

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自販機

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ドリアンベランダ