美味いものリスト

 少し前から美味いものリストを作っている。名前の通り美味いものをリストアップしたものだ。iPhoneのメモ機能を使って作成している。何かを食べて美味いと感じ、記録しておくべきだと判断した時に追加することにしている。このようなリストを作っているのには理由がある。それは日々の生活の中で美味いものを食べたいと思ったとき、その欲求に十全に応えるためだ。
 美味いものを食べたいと思うときには、何かきっかけがあり食べたい対象が明確な場合もあるが、そうではなく何か美味いものを食べて安らかな気持ちになりたいというような漠然とした欲求が湧く場合もある。美味い物リストは後者の願望に応えるためにある。
 無策でこの願望に応えようと頭の中を「美味いもの」というキーワードで検索しても中々上手くいかない。大概の場合、ステーキや寿司などといった通俗的なご馳走イメージに引きずられたり、「最近食べたあれは美味かった」というような少し前に食べたばかりのものと結びついたりしてしまうことが多い。これらがその時求めている美味いものへの回答になることは少ない。
 この方法が上手くいかない理由は、美味いという言葉が単一の味や感覚を表す言葉ではないことと、美味いという感覚が反芻して思い出せるようなものでは無いことにあるように思う。つまり「美味い」という言葉から出発して、具体的な美味いものに辿り着くのは難しい。一方で料理名を提示されて、それが好きか嫌いかを判断するのは割合簡単だ。
 このことから容易に導かれる1つのアイデアは日頃から美味いものの情報を蓄積しておき、有事の際に参照するというものだ。
 このような考えから出発した美味いものリストだが、早速問題にぶつかっている。それはどのような基準でリストに入れるかだ。もちろん美味さが基準となるのだが、先も述べたように美味いというのは多様な味わいをひっくるめて1つの言葉にしたものだから、1口に美味いといってもその内実はそれぞれ違う。そのためリストに入れるかどうかの普遍的な基準が作れず、美味いけどリストに入れるほどでも無いというようなケースや、これは明らかに美味いが何か自分の中でこれのリスト入りを妨げる気持ちがあるというようなよくわからないケースが出てくる。当初、このような問題に対しリストを作る序盤で悩むのはあまり得策ではないように思い、とりあえず少しでも美味いと思ったらガンガンリストに追加するという方針を取ろうと考えた。しかし実行には移していない。
 それは、今のリストの状態が非常に良い雰囲気だからだ。僕の求めていたリストにふさわしい、言われてみれば確かにこれは好きだというようなものが良い感じに集まったものになっている。ここに有象無象の美味い物を放り込んでしまいたくなかった。
 現在のいい感じのリストを構成する食べ物のリストインの理由はその時その時の「入れるべきか」「入れないべきか」の2択の結果によるもので、その判断の根拠は自分でも言語化できない感覚的なものだ。こういう雑な方法はいつかはガタが来るとは思うのだが今のところは上手くいっている。なにか問題が生じるまではこれで行こうと思う。
 最後に現在のリストを公開しておく。
・みかん
イカのワタ焼き
・ちんすこう