旅行することにした

 来月に海外旅行をすることにした。

 数年前までは旅行への興味はほとんどなかった。むしろ僕が一部の旅行者に対して持っていたイメージは「離れたところからその土地の人々の生活のほんの一端を眺め、自分の常識との差に逐一驚き、旅行者向けに整備された場所を巡り、実のところ興味があるわけでもない説明書きを熱心に読み、何か大事なことを学んだような気分になれる軽薄な人たち」というものだった。もちろん全ての旅行がこのような軽薄な異文化体験だと思っていたわけではなく、単に心地よい気候の下で過ごす、本場の料理を食べる、きれいな風景・建造物を見るなどといった気負いのないレジャーとしての旅行や、例えば建築に関する知識をいくらか持った人が建築様式の違いを実際に見に行くというような、明確な目的をもった旅行もあることは理解していた。ただこれらの旅行も、家にいるのが好きで特段その手の物に関心のない僕にとっては魅力あるものではなかった。

 旅行に対する印象が変わったのは去年に足摺に旅行に行ってから。この旅行については前にこのブログに書いたが足摺海底館を見るのを目的としたもので、ついでに足摺岬などのいくつかの観光名所を巡った。この旅行で僕がしたのは上の方で軽薄な異文化体験と書いたものと類似の、町を歩いて雰囲気の違いを感じ、丁度開催していた地元の祭りに参加し、観光地を巡る(説明書きは興味あるもの以外は読んでいないが)というもので、これまで内心馬鹿にしてきたものだが、やってみると楽しかった。実際にやってみることで見落としていた意義が見えたとかそういうことはなく、やはり軽薄といえば軽薄な行為なのだがそれはそれとして楽しかった。この件に限らずこれまで何度も反省してきたことだが、改めて自己像がいかに当てにならないものかと感じた。

 で、自分が旅行を楽しめることが分かったのだから色々行ってみようと考え、今回海外へ行くことにした。旅行ビギナーとしては国内にしてもよかったのだが、今の環境との差異がより大きい海外の方が自己像を揺さぶるような経験を多く経験できる気がして海外を選んだ。ただ日本との違いに気を向けすぎて危険なところへ行き、事件に巻き込まれたりしたらシャレにならないので、そこはビギナーとして安全そうな国を選んだ。それでも色々調べてみるとやはり日本と比べれば危険なようで、ちゃんと対策をする必要がある。様々なトラブルの事例を見ると参考になることは多いものの、正直なところどれくらい気を張るべきなのかその匙加減がつかめない。トラブルを避けようとするあまり過度に排他的になったり、慎重になったりしては経験の幅を狭めてしまう。この匙加減も今回の旅行を通じて体得したい。