鴨川石垣の白い花

 昨日京都駅付近へ行く予定があった。22時頃に用事が終わり、京阪の七条駅から電車に乗って帰ろうと駅まで歩いた。駅に向かう道中であることを考えていて、駅に着いたところでもう少し考えてみたい気分になり、電車に乗るのをやめて鴨川の河川敷を北へ向かって歩くことにした。
 歩いていると不意に花のいい香りがした。河川敷は通路の片側が川沿いの斜面、もう片側が石垣になっている。石垣に寄ってみると壁面はこんもりと植物に覆われており、それが花をつけている。花の匂いを嗅いでみるとやはりいい香りがした。この香りは僕が心の中で「キンモクセイの香り」と呼んでいるものだが、実際にキンモクセイの香りなのかは知らない。何故このような事態になっているかと言うと、トイレの芳香剤の香りとしてキンモクセイの香りがよく用いられるという話を聞いたことがあり、また自宅の近所にある木の花の香りが芳香剤と同種の香りを放っていたため、その木がキンモクセイだと推測してその香りを「キンモクセイの香り」と呼んでいるからだ。
 話はずれるがこの手の推測で僕は一度ミスをしたことがある。ある時に人から土産としてあんこ入りの平ぺったい餅をもらったことがあった。僕は当時信玄餅を名前だけ知っているという状況で、もらった餅が今までに見たことの無い餅だったものだから、20年以上生きてきて新規に出会う餅はもう信玄餅ぐらいしかないだろうと考え、「もしかして信玄餅ですか」と口に出したところ他の人から「どう見ても違うでしょ」という指摘を受けてしまった。

 香りの発生源を確認したあと、再び歩きはじめる。改めて見ると石垣の表面は断続的に例の植物で覆われている。その後歩きながら何度か石垣へ寄って匂いを嗅いでみたのだが、それほど香りを感じなかった。ともすれば自分の思い込みかもしれないと感じるほどの香りの弱さだった。何故これほどまでに差があるのか不思議に思い、少し考えたが分からないまま自宅の近所まで着いたので鴨川を離れた。

 今日の明るいうちに改めて匂いの差を調べに鴨川へと行った。今回は昨日とは逆に京都駅の方へ南下していく。三条大橋を過ぎたあたりから例の植物が現れる。例の植物には花が咲いているものと咲いていないものがあった。しかし花があっても必ずしも良い香りがするわけでは無く、花によって香りが強かったり弱かったりした。ほとんどのものは微かに香りがあるか若しくは気のせいかというレベル。また昨日は気付かなかったが、塊ごとに大きく2種類の見た目をもつ。1つは葉の全体が緑色のもので、もう1つは葉の一部分が白くなっているもの。これらは塊ごとに一貫している。つまり全体が緑色の葉と一部が白くなっている葉は1つの塊の中で混在していない。しかしこの差異も香りの有無を決定するものでは無かった。
 結局分からずじまい。最も匂いが強かったのは四条大橋を少し南に行ったところにある塊で、そこは最も花の密度が高く、葉よりも花の割合の方が大きく見えるほど。他の場所では鼻を寄せて嗅がないと分からなかったり、せいぜい風に乗った香りを微かに感じるという程度なのに対し、この場所は近辺にいるだけで濃厚な香りを感じた。

 先ほどキンモクセイの画像を検索してみたところ、自宅の近所にある木はキンモクセイでは無く、鴨川にあるのもキンモクセイでは無かった。そもそもキンモクセイは秋に開花するらしい。ただカレーリーフの花も同種の香りを放っていたような気がするので、花の香りとしてはよくあるものなのかもしれず、そうだとすれば例の植物の香りがキンモクセイの香りである可能性はまだある。
 植物の香りというといつも思い出すのは前に高知へ観光へ行ったとき、足摺岬へ向かうバスに乗り込んできたその地域の住民が持っていた樹木の枝の香りのこと。今やどういう香りか思い出せないけれど嗅いだことの無いタイプの良い香りだった。それを見たのは8月中旬で乗り込んでくる乗客の何人かが同種の枝を新聞紙にくるんだ状態で持っていたため、少なくともその地域ではポピュラーな樹木なのだろう。樹木の名前を尋ねようかと思ったけれど、踏ん切りがつかず聞かずにしまった。今でも気になる。
写真


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石垣がこんもりと覆われている

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葉全体が緑のもの

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葉の一部が白いもの

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最も花密度が高かった塊。匂いも最強。写真の色調がおかしい。

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河川敷にあった綺麗な草花。恐らくムラサキツメクサ