フードコートの呼出機械

 昨日、ある複合型商業施設のフードコートで昼食をとった。食べたのはリンガーハットの野菜たっぷりちゃんぽんミドル+餃子。そこのリンガーハットのシステムは店頭で注文するとスマホぐらいのサイズの機械(以下、「呼出機械」とする)が渡され、料理が出来上がると通知が来る。そうしたら店頭まで行き、呼出機械と引き換えに料理を受け取るという仕組みになっている。標準的なフードコートのシステムだと思う。

 注文を済ませ、セルフサービスの水を汲み、空いている席に座った。机に呼出機械を置き通知を待つ。僕の記憶ではこの機械の通知はランプの点滅+バイブレーション+電子音の3つの形で同時に来る。このことを思い出すと「通知の音に驚いてしまうかもしれない」という不安が芽生えてきた。机の上においた機械が振動する音と電子音は中々に鋭い。不意を突かれれば身体をビクッとさせてしまうのは避けられないし、驚いた拍子に脚の筋肉が収縮し膝で机の裏を蹴る可能性もある。最悪なのは後方に飛びのくような驚き方をした場合で、このときには椅子ごと後ろに倒れるという酷い有様になる。
 しかし驚くのを防ごうにも術がない。腕組をしながら机の上の機械を見つめていると、もういつ鳴っても驚いてしまうような気がした。鳩尾の奥のところにずっと力が入っているような落ち着かない感じがした。このままではいけないと思い、視線を上げて他の事を考えようとするがすぐに機械へと意識が戻ってしまう。いつもは5分ほどで通知が来るのに今日はなかなか来ない。時間が過ぎるほどに次の一瞬に通知が来る可能性は高まるため、緊張感も高まっていく。
 通知が来た。音も振動もなく赤いランプが2度点滅して消えた。幸いにも音を伴わなかったため驚かずに済んだ。しかし通知の形式がいつもと違う。気がする。確証はないが以前は音が鳴っていたはず。また音が僕の記憶違いだったとしても、通知が2度の点滅のみというのはおかしな感じがする。見逃したら終わりだからだ。つまり何らかのイレギュラーが生じていることが推測できる。本来鳴るはずの音が何らかの故障で鳴らなくなっている可能性が高い気がするが、故障によって無関係な点滅が生じた可能性もある。どうしようかと逡巡するうち再び機械が点滅を始めた。さすがにこれは料理完成の通知だと考え店頭へと向かう。向かう途中、店頭に僕の注文した料理が用意されているのを見つけ、やっと完全に安心し無事料理を受け取った。