青唐辛子の一瞬の爽やかさ

 赤唐辛子の苗を2か月ほど前に買って育てている。買った苗は3株でその成長の具合は一律ではない。2株は多くの葉と花をつけ同時に多数の実がついたが、その実の成長スピードは遅い。もう1株は葉も花も少ない。当然実の数も少ないが、その時その時に主となって成長する実があり、その実だけはすぐに大きくなる。そしてその実を収穫すると、残っている小さい実の内の1つの成長が活発になる。葉も花も多い苗からはまだ1つも収穫できていないが、葉も花も少ない苗からは既に4つほど収穫できている。
 僕は収穫の適切なタイミングを知らないので、実の大きさだけを基準に収穫している。赤唐辛子なのだから実が赤くなるタイミングがあるはずなのだが今のところ青いまま収穫し、青いまま食べている。いつ赤くなるのかは調べれば容易にわかると思うが、調べてわかるのもつまらないのでしていない。ただ僕のこれまでの唐辛子と接点を持つ経験を総合すると、枝についたままの状態、つまり収穫前に赤くなるだろうと予想している。
 今日も1つ収穫した。収穫してすぐに軽く水で洗って一口かじってみたところ、一瞬口の中に独特で爽やかな香りが広がり、その後猛烈な辛さが来た。あまりの辛さに吐きだそうかと思ったが、なんとなく気が引けたため急いで咀嚼し飲み込んだ。すぐに口を何度もすすいだが辛さは収まらない。冷蔵庫にわずかに残っていた牛乳を飲んだり、再び口をすすいだりしていると多少落ち着き、依然としてヒリヒリするものの耐えられないほどでは無くなった。
 僕がこう不用意に唐辛子をかじってしまったのには多少の理由がある。これまで4つほど収穫したと書いたが、最初に収穫したものはわずかに辛く、そして独特の爽やかな香りがあった。2つ目以降は全く辛くなく特段香りもなく少し肉厚なピーマンといったようなものだった。それで今回も辛くないか、辛いとしても大した辛さではないと高を括っていた。
 ただ再びあの独特の爽やかな香りを味わえたのはよかった。言葉でうまく形容できないが、レモンの香りの中にピーマンの青っぽい匂いが少し混じったような香りというと少しは表現できているかもしれない。この香りは僕にとって好ましい香りで出来ることならもっと味わいたいところだが、それには5分ほど辛さに悶えるという代償を払わなくてはならない。さきほど意を決して2口目をかじったところやはりいい香りがしたが当然辛さに襲われた。